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診療案内

アトピー性皮膚炎

当院ではアトピー性皮膚炎の治療を積極的に行っています。
アトピー性皮膚炎は、大きく二つの原因から成り立っていると言われています。

  • 1.バリア機能障害
    皮膚の一番表面に存在する角質の異常による皮膚の乾燥により、バリア機能が障害されます。皮膚は水分を保持することによりその防御機能を有しますが、乾燥してしまうことにより、外から刺激が入り易くなる状態です。
  • 2.アレルギー異常
    アトピー性皮膚炎というと、バリア機能障害よりもアレルギーの側面は以前より強調されてきました。しかしながら、アレルギーと一言にいっても、さまざまなタイプがあり、複雑に絡み合っています。

食物アレルギーの経皮感作

以前より食物アレルギーがアトピー性皮膚炎に関与することは知られていました。つまり食べ物が原因でアトピー性皮膚炎が起こる(あるいは増悪する)という理解でした。
しかし、最近の研究によりアトピー性皮膚炎があることにより食物アレルギーが起こり易いのではないかと考えられるようになったのです。
以前とは発想が逆ですね。(もちろん食物アレルギーによるアトピー性皮膚炎の増悪もあります)
それは、アレルギーの引き金となる感作を起こす経路が、消化管を通してではなく(食事)、皮膚を通して(触れることによって)起こるのでないかと考えられるようになったからなのです。
このことは茶のしずく石けんを使用したことにより小麦アレルギーを発症したことを通しても実証されつつあります。
皮膚を通して、アレルギー物質が入り込んでしまうことが問題なのですが、健康な皮膚ですとアレルギー物質は容易に皮膚には入りません。しかし、アトピー性皮膚炎では、皮膚の湿疹がありますので、バリア機能が障害され、感作されてしまうということです。
食物アレルギーを引き起こさないためにも、アトピー性皮膚炎の状態をよく保つこと、つまりスキンケアが重要ということですね。

アトピー性皮膚炎におけるプロアクティブ療法

アトピー性皮膚炎では、湿疹を繰り返すことが問題ですね。少しよくなったり、一時的によくなったりする経験は必ずあると思います。しかし、いい状態をいかに維持するかが、アトピー性皮膚炎の一番の問題です。
従来ですと湿疹が生じて初めてステロイド軟膏を使用しました。症状に応じてステロイドの強さも変えていました。もちろん、こういった外用療法は重要なのですが、新しい概念としてプロアクティブ療法というものが言われ始めています。
プロアクティブとは、「何かが起こってから対応するのではなく、事前に予測して予め対応を取る」というような意味です。
具体的には、湿疹性病変が出現する前に、外用剤を使用して湿疹が出現しないようにするということになります。
もちろん、使用する外用剤、使用頻度等、細かい指導が必要ですが、治療概念としては、これまでとは異なると思います。
当院では、患者様と相談しながら、適切な治療法を選択していきますので、ご遠慮なく御相談ください。

アトピー性皮膚炎における紫外線療法

外用療法や抗ヒスタミン剤の内服によっても、症状の改善が不十分の場合、紫外線療法を行うことがあります。日本皮膚科学会によるガイドラインにおいても補助的治療として有用と位置付けられています。ナローバンドUVBエキシマライトにより治療を行います。全身に照射することも手などの局所にのみ照射することも可能です。保険適応のある治療です。(3割負担で約1,100円)

アトピー性皮膚炎の治療のゴール

アトピー性皮膚炎は慢性疾患です。多くの方は長年辛い皮膚症状に悩まされています。治療のゴールをどこに設定するかは非常に重要になってきます。
日本皮膚科学会のガイドラインによると、「症状がないか、あっても軽微で、日常生活に支障がなく、薬物療法もあまり必要としない状態に到達し、それを維持すること。また、このレベルに到達しない場合でも、症状が軽微ないし、軽度で、日常生活に支障をきたすような急な悪化がおこらない状態を維持することを目標とする。」とあります。
つまり、治療により症状がない状態(寛解という)を達成し、それを維持することが重要とされています。
重症のアトピー性皮膚炎に長年悩まされている方にとって、症状がない状態(寛解)を達成すると聞くと、現実的に感じられない方もいらっしゃると思います。
しかしながら、最近のアトピー性皮膚炎の治療の進歩により、以前と比べるとかなり多くの方で寛解を達成できる時代になってきました。

最重症のアトピー性皮膚炎の治療

種々の外用、紫外線療法でも改善しない場合、シクロスポリンによる内服療法を行なっておりましたが、なかなか、寛解を得ることができない方がいらっしゃいました。治療の限界を感じていた方もいらっしゃると思います。
現在では(2018年以降)、デュピルマブ、JAK阻害薬により寛解を目指すことが可能になってきました。これまでの治療に比較し、治療効果の優位性を示すデータが蓄積されてきています。当院でも多くの方に使用経験があり、効果を実感しております。

デュピルマブについて

デュピルマブは、アトピー性皮膚炎の病態に重要な役割を果たしている2型炎症反応を抑えることで、効果を発揮します。ステロイドなどによる作用と比較すると、よりアトピーに特異的に効果を発揮します。結膜炎等の副作用をまれに認めますが、副作用も比較的少なく、安全性が高く、効果も非常に高い治療と考えます。

デュピルマブの治療方法は

初回に2アンプル、2回目以降は1アンプルを2週間ごとに皮下注射します。
3回目以降はご自分で注射をすることができるため、通院頻度を下げていくことができます。症状にもよりますが、4周毎、6周毎、12周毎に通院している方もいらっしゃいます。

デュピルマブの投与期間は

デュピルマブは、少なくとも寛解(皮膚症状が完全に消失している状態)を得るまで、あるいはそれを維持できている状態までは続けることが望ましいです。少し良くなって、治療を中断してしまうと、デュピルマブに対する抗体というものができることがあり、薬剤の効果が発揮されなくなる可能性があります。この治療は長く続けることを前提に初めていただきたいと考えております。多くの方にとって、最低1年は考えていただいた方がいいかと考えております。

デュピルマブの費用は

3割負担の方で、初回35,265円、2回目以降17,633円(薬剤費のみ)の負担になります。3回目以降は6回分ごと(3割負担の方で約106,000円)処方します。高額になりますが、高額療養費制度などを利用することが医療費を抑えることができる場合があります。

高額療養費制度の仕組み
1ヵ月(その月の1日~末日)の間に医療機関の窓口で支払うべき額(自己負担額)が、一定の金額を超えることになった場合、自己負担額を一定額(自己負担上限額)にまでおさえることができる制度です。詳しくは加入している保険者などにご確認ください。

「多数回該当」制度の仕組み
継続して高額な医療を受ける必要のある方には、自己負担上限額がさらに引き下げられる制度があります。
直近12ヵ月以内に3回以上高額療養費制度の適用を受けた場合(「多数回該当」といいます)、4回目以降の月の自己負担の上限額がさらに引き下げられます。

付加給付制度(健康保険組合等の独自制度)
高額療養費制度は国が定める制度ですが、ご加入の医療保険(保険者)によっては、独自の「付加給付」として、国が定めるよりも手厚い医療費助成を行っており、自己負担上限額がさらに低く設定されている場合があります。
すべての保険者で実施されているわけではありませんので、詳しくはご加入の保険者(健康保険組合等)にご確認ください。
お問い合わせ先:健康保険証に記載されている保険者(健康保険組合等)

デュピルマブによる治療対象者は

これまで外用治療、紫外線治療等を続けてきたが、治ったことがない方にとっては、最も安全で効果の高い治療と考えます。

デュピルマブの参考資料は

デュピルマブを使用される患者さんへ▶︎
医療費の助成制度について▶︎

JAK阻害薬について

先のデュピルマブと同等に効果のある薬剤としてJ A K阻害薬が登場しました。JAK-STATシグナル伝達経路を阻害することで効果を発揮します。
現在、使用可能な薬剤として、バリシチニブ、ウパダシチニブ、アブロシチニブがあります。
飲み薬になります。先のデュピルマブと比較し、注射ではなく、内服薬という利便性があります。治療効果は内服量にもよりますが、薬剤によってはデュピルマブよりも効果があるというデータもあります。内服薬ですので、症状に応じて量を調節することも可能です。デュピルマブのように治療の中断を避ける必要もありませんので、一時的に症状緩和のために使用することも可能です。

JAK阻害薬の注意点

感染症のリスクが高まる懸念があります。治療前にレントゲン検査、各種感染症の検査(採血)を行う必要があります。治療経過中も採血は定期的に行う必要があります。また、帯状疱疹にかかりやすかったり、ニキビができやすい可能性もあります。もちろん、その都度対応は可能です。

薬剤費について

内服量にもよりますが、標準的な量で、先のデュピルマブと同程度の薬剤費がかかります。比較的高額にはなりますが、オンオフはしやすい薬剤ですので、コントロールがよくない場合、試してみる価値はあると考えます。

バリシチニブについて

バリシチニブについて▶︎

ウパダシチニブについて

ウパダシチニブについて▶︎

JAK阻害薬による治療対象者は

外用療法、紫外線療法にて治ったことがない方で、デュピルマブを躊躇されている方。注射が苦手な方。一時的にでも症状を良くしたいと考えている方。デュピルマブを使用しても寛解(皮膚症状がない状態)に至っていない方。12歳以上の方。ウパダシチニブは12歳からも投与可能です。

アトピー性皮膚炎の治療に対する考え方の変化

これまでアトピー性皮膚炎の治療は、症状に応じて、治療を調整するようなところがありました。治ってきたら、治療を弱めて、悪くなれば強めるという感じです。2018年のデュピルマブの登場以降、寛解という考え方が重要になってきています。薬剤により皮膚症状を完全に消失させるということです。少しずつ治すのではなく、できるだけ早期に症状を消失させ、それを維持するという考え方です。以前ですと重症の方にとって、寛解という言葉は、現実的ではありませんでした。しかし、現在では、デュピルマブ、J A K阻害薬を使用することで、多くの方が寛解を得ています。それによりQ O L(quality of life)の改善を実感していらっしゃいます。寛解を得ることにより、ステロイド外用を減らすこともできることから長期的にも皮膚の負担も少なくなると考えます。なんとなく、燻っている症状を長年続けるよりは、一度寛解を得ることで違う世界を感じて欲しいと願っています。

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